はじめに
営業は結局「人」と「情報」の仕事です。だからこそ、面倒な定型作業やメモ取り、メールの下書きといった「手間」をAIに任せると、あなたが本当に価値を出す「顧客との会話」に使える時間が増えます。重要なのは一度に全部を変えようとしないこと。まずは「1つの課題」をAIで試してみる。それだけで日々の負担がぐっと下がります。
まず、AIに任せるとラクになること(超実務的)
- メールの下書きや言い回しの改善(時間短縮・返信率アップ)
- 商談や会議の文字起こしと要点整理(聞き逃し防止・次アクションの明確化)
- 顧客情報の整理(CRMへの記録を簡単にする)
- どの案件に注力すべきかの優先度判断(迷いを減らす)
- よくある反論への返答テンプレ作成(準備の負担を下げる)
初心者におすすめのツール(操作がかんたんで効果が出やすい順)
ここでは、ITが苦手な営業マンでも扱いやすいツールを実名で紹介します。まずは無料プランやトライアルで「感触」を掴んでください。
Lavender — メール改善のコーチ
何ができるか:LavenderはGmail/Outlookの拡張として動き、書いたメールにスコアを付け、件名や導入文などの改善案を出します。
初心者向けポイント:特別な設定は不要。普段のメール画面でそのまま使え、AIが「どこを直せばいいか」を具体的に示してくれます。
最初の一歩:ブラウザに拡張を入れて、いつもの営業メールを1通スコア化してみてください。改善案を1つだけ適用して送るだけで効果を体感できます。
Grammarly — 文体・誤字脱字・トーンを整える
何ができるか:Grammarlyは誤字や文法のチェックだけでなく、文章のトーン(丁寧・親しみ・プロフェッショナルなど)を判定して提案します。ブラウザ拡張でGmailやWeb上の文面を自動チェックできます。
初心者向けポイント:提案に従うだけで文章が整うので、文章作成がぐっと楽になります。
Otter.ai または Fireflies.ai — 商談/会議の文字起こしと要約
何ができるか:Otter.aiやFireflies.aiはZoomやGoogle Meetの会議を自動で文字起こし・要約し、アクション項目を抜き出してくれます。Otterは会議からフォローメール下書きを作る機能もあります。Firefliesは会議にBotを招待して録音→要約を返す仕組みです。
初心者向けポイント:Botを招待するだけで議事録が届くので、操作は非常にシンプルです。「会議で何が決まったか」を自動で把握できます。
ChatGPT(OpenAI) — 文面リライト・反論テンプレ・アイデア出し
何ができるか:ChatGPTは自然言語で相談するだけで、さまざまな文面、反論対応、フォローメール案などを生成します。プログラミング不要で扱えます。
注意点:顧客の個人情報や機密情報を直接入力しないこと(必ず匿名化する)。
最初の一歩:ChatGPTを開き、「このメールをもっと短く丁寧にして」と本文を貼ってリライトを実行。出てきた下書きを自身の言葉で微修正して送ってみましょう。
HubSpot(無料CRM) — 顧客管理をシンプルに始めたい人向け
何ができるか:HubSpotは無料のCRMで連絡先管理、取引管理、メールトラッキングができます。最近はCRM内AI(ミーティングサマリやメール下書き)も強化されています。
初心者向けポイント:GUIがわかりやすく、学習リソース(HubSpot Academy)も豊富。まずは無料で顧客管理に慣れると良いです。
ITツール一覧(表でまとめる)
ツール名 | 用途 | 主な機能 | 初心者向け度 | 価格感(目安) | 無料プラン | 導入の第一歩 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Lavender | メール改善・コーチ | メールスコアリング、件名・導入文の改善案、Gmail/Outlook拡張 | ★★★★★(簡単) | 低〜中(個人〜チーム向けプラン) | あり(トライアルあり) | ブラウザ拡張をインストールして普段のメールをスコア化 | コールドメールの反応改善で即効性が高い |
Grammarly | 文章校正・トーン調整 | 誤字・文法チェック、トーン判定、ブラウザ拡張で自動チェック | ★★★★★(非常に簡単) | 無料〜中(有料で追加機能) | あり | 拡張を導入してGmailやブラウザ上で試す | 文章の“体裁”を整えたい人向け |
Otter.ai | 会議・商談の文字起こし/要約 | リアルタイム文字起こし、要点抽出、会議メモの共有 | ★★★★☆(簡単) | 無料〜中(使用量による) | あり | 無料アカウント作成→次回ミーティングにBotを招待 | 会議の聞き逃し防止に便利。議事録作成の負担軽減 |
Fireflies.ai | 会議録音と自動要約 | 会議への自動参加・録音・要約、タスク抽出 | ★★★★☆(簡単) | 無料〜中(使用量による) | あり | Botを会議に招待するだけで録音と要約が届く | カレンダー連携で運用が楽 |
ChatGPT(OpenAI) | 文面作成・リライト・アイデア出し | 自然言語生成、リライト、反論テンプレ作成、簡易データ要約 | ★★★★☆(会話感覚で使える) | 無料プランあり/有料プランあり(機能差) | あり | ChatGPTを開き「このメールを短く丁寧に」と入力して試す | 個人情報は匿名化して入力すること |
HubSpot(無料CRM) | 顧客管理(CRM)+AI支援 | 連絡先管理、取引管理、メールトラッキング、ミーティング要約等 | ★★★★☆(GUIが分かりやすい) | 無料〜中(機能拡張は有料) | あり(無料CRM) | 無料アカウント作成→主要顧客をインポート | CRMの入門として最適。教育リソースが豊富 |
Reply.io | シーケンス/アウトリーチ自動化 | メール・LinkedIn等のマルチチャネルシーケンス、自動化 | ★★★☆☆(やや設定あり) | 中(チーム向け) | トライアルあり | トライアルで既存テンプレをシーケンス化して試す | 大量追客向け。テンプレ整備が重要 |
SalesLoft | セールスエンゲージメント/ワークフロー | シーケンス管理、コーチング機能、分析ダッシュボード | ★★★☆☆(設定に慣れが必要) | 中〜高(企業向け) | トライアルあり | PoCで小チームに展開して効果を測定 | 中堅〜大手に向く。ワークフロー最適化に強い |
Outreach | セールスオートメーション/AI提案 | 次アクション提案、案件スコアリング、シーケンス自動化 | ★★★☆☆(導入支援推奨) | 中〜高(企業向け) | トライアルあり | 小規模PoCで導入効果を検証 | 大規模運用で力を発揮する |
Gong | 会話インテリジェンス(商談解析) | 通話解析、勝ちパターン抽出、コーチング素材生成 | ★★☆☆☆(学習曲線あり) | 高(法人向け) | PoC/デモ要相談 | まずは上位成功商談を解析するPoCを依頼 | 深い分析が可能だがコストが高め |
Chorus | 会話インテリジェンス(商談解析) | 録音・文字起こし・ハイライト抽出、商談分析 | ★★☆☆☆(学習曲線あり) | 高(法人向け) | PoC/デモ要相談 | 小規模でのPoCから勝ちパターンを作る | 営業品質を組織的に改善したい企業向け |
ZoomInfo | リード発掘・インテントデータ | 企業データベース、購買意図スコア、ターゲット抽出 | ★★★☆☆(使い方で効果が変わる) | 中(データ量による) | トライアルあり | 特定業界のリスト抽出を試験的に購入して反応を見る | B2Bのターゲティング精度向上に有効 |
Apollo | リードデータ+アウトリーチサポート | 企業/担当者データ、シーケンス機能、インテント指標 | ★★★☆☆(使いやすいUIあり) | 低〜中(中小チームにも手頃) | あり(無料枠あり) | 無料枠でターゲットリストを抽出して反応を測る | コスト対効果が出しやすい選択肢 |
Bombora | インテントデータ(購買意図解析) | 業界/カテゴリごとの関心度スコア、インテントAPI提供 | ★★★☆☆(データ連携が必要) | 中(用途により変動) | 要問合せ | マーケと連携してインテントを配信トリガーにする | マーケ連携で効果が最大化 |
Lavender+Otter+ChatGPT の組み合わせが手堅い理由
この組合せは、導入のハードルが低く即効性が高いのが特徴です。Lavenderでメールの反応を改善し、Otterで会議の抜けをなくし、ChatGPTで文章を素早く整える。どれも設定が簡単で、ITに自信がない人でも1ヶ月以内に違いを実感できます。
実際のやり方(具体的な手順)
準備フェーズ(1日)
- 目的を1つに絞る(例:「月の返信率を今より10%上げる」)。
- 使うツールを決める(例:Lavender と Otter)。
- 測定方法を決める(過去のメール50通や前月の商談実績と比較するなど)。
実行フェーズ(1〜4週間)
- 1週目:Lavenderを入れて過去の代表メールをAIで改善→1通送る。
- 2週目:Otterを次の商談で使い、要点を取得。ChatGPTでフォローメールを作る。
- 3週目:返信率・商談化率を測る。良ければ成功例をテンプレ化しチームで共有。
- 4週目:うまくいった文面を自動化(Reply.io や SalesLoft の検討)。
具体例:メール改善のワークフロー(初心者向け)
- 普段使っているメールテンプレを20件抜き出す。
- Lavenderでスコアを取る(どの部分が低評価かを確認)。
- スコア上位の例を3つピックアップして良い点を抽出(例:「件名に数字を入れる」「導入は2文以内にする」)。
- ChatGPTに「上のルールを守ってこの案件向けに短いメールを作って」と依頼し、出てきた文面を自分の言葉で微修正して送る。
商談後フォローの定型(Otter + ChatGPT)
- Otterで会議の文字起こしを取得。
- 重要箇所(課題、次アクション、期限)を抜き出す。
- ChatGPTに「下記の要点でフォローメールを作って」と入力し、生成文を確認して送信。
この流れを習慣化すると、「会議での抜け」「次アクション忘れ」はほぼ解消されます。
初心者向け「30日でAIを仕事の一部にする」具体プラン(週ごと)
0週(準備)
- KPIを決める(例:メールの返信率、商談化率)。
- 過去のデータを用意する(過去30〜90日のメール・商談記録)。
1週目(導入)
- Lavenderをインストールして、代表メールを1通改善して送る。
- Otterの無料アカウントを作り、次の商談にBotを招待する。
2週目(運用)
- Otterの要約を参考にChatGPTでフォローメールを作る。
- Grammarlyで文章のトーンを整える習慣を始める。
3週目(測定)
- AI適用後の返信率・商談化率を前月比で比較。
- 成果が出た文面をテンプレ化。
4週目(改善)
- テンプレをチームに共有し、良かったポイントをマニュアル化。
- 次のツール(例:Reply.ioのトライアル)を試す準備をする。
現場でありがちな不安とその対策(初心者向け)
AIの文面が機械的になるのでは?
→ 最終チェックは必ず人が行ってください。AIは下書きです。違和感のある表現は自分の言葉で直しましょう。
個人情報が漏れないか心配
→ 顧客のフルネームや契約内容などは外部AIに直接入力しないでください。必ず匿名化するか、社内CRMのAI機能(HubSpotなど)を優先しましょう。個人情報の取り扱いは最重要です。
操作が面倒で続くか心配
→ 最初は週に1回、10分だけツールに触る時間を確保してください。1ヶ月続ければ習慣化され、作業時間が確実に減ります。
次のステップ(30日後にやること)
- 効果が出たテンプレをReply.ioやSalesLoftなどのシーケンスツールに入れて自動化を検討する。
- 商談の品質をさらに上げたい場合はGongやChorusのPoCを検討する(導入コストが高めなので段階的に)。
- BtoBでより先回りしたいなら、ZoomInfoやApolloでインテントデータの試験導入を検討すると効果が出ることがあります。
すぐ使える ChatGPT プロンプト(コピペして使える)
- メール短縮:「以下の営業メールをもっと短く、丁寧にしてください。件名は5〜7語でお願いします。」+本文
- 反論対応:「お客さんから『価格が高い』と言われたときの短い返しを3パターンください。業界はSaaS、対象は中小企業です。」
- フォローメール:「商談メモを元に、次のアクションを明確にしたフォローメールを作ってください。要点:課題A、提案B、次回の期限は来週金曜。」
すぐ使えるテンプレ(そのままコピペ可)
録音同意テンプレ(口頭)
「この通話は記録して内容を要約し、後で提案書を作るために使わせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
初回接触メール(短め)
件名:御社の〇〇を△△%改善する方法(数字や期間を入れる)
本文:
1) 挨拶+自分の立場(1行)
2) 相手の課題を指摘(1行)
3) 簡単な提案(1〜2行)
4) CTA(15分のオンラインで状況を伺いたい、など)
署名:電話番号+短い人となりの一言
効果が出やすいパターン(経験則)
- 件名に具体性(数字や期間)を入れる。
- 導入は2文以内にする。
- CTAは「短い時間」を指定する(例:15分)。
- パーソナライズは「業界の現状」や「直近のニュース」を一文入れるだけで反応率が上がる。
費用と投資判断の考え方(シンプルに)
まずは無料プランやトライアルで「効果を確認」してください。効果が出たら、有料プランの年間コストと増収見込み(増収 ÷ コスト = ROI)を比較します。ツール費用だけでなく、設定や教育にかかる時間も考慮に入れてください。
また電話営業AIも効果的です。
注意点(絶対に守るべきこと)
- 個人情報は外部に出さない(顧客の氏名・契約金額・個別条件は匿名化)。
- AIの出力をそのまま送らない。必ず自分の言葉で最終チェックする。
- 録音は相手の同意を得る。法律と社内ルールに従う。
よくある質問(Q&A)
Q. AIに頼ると営業スキルが下がる?
A. いいえ。AIは下書きや分析を手助けする道具です。適切にフィードバックループを回せば、むしろスキルは上がります。
Q. 小さな会社でも意味はある?
A. あります。メール改善や議事録自動化は規模に関係なく時間を生みます。まずは無料で試して感触を掴んでください。
Q. 失敗しやすいポイントは?
A. ツールを入れて放置すること、データを整理しないこと、AIの提案を鵜呑みにすること。この3つを避ければ失敗確率は下がります。
最後に(営業マンへの短い励まし)
AIは怖い機械ではなく、日々の「めんどくさい」を代行してくれる相棒です。最初は抵抗があるかもしれませんが、まず1週間だけ真剣に試してみてください。Lavenderでメールを1通直し、Otterで会議の要点を受け取り、ChatGPTでフォローメールを作る。これだけで見える世界が変わります。ITに自信がない営業マンほど、最初の一歩を踏み出すことで大きく差がつきます。応援しています。