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2025.09.08

電話営業のコツ大全:現場で「断られにくく」「次につながる」通話の作り方

電話営業のコツ大全

電話営業(インサイドセールス/テレアポ)で成果を出す人は、偶然ではなく「準備・再現・検証」の3点を淡々と回しています。本記事では、初学者〜中級者がすぐに真似できる具体テクニックから、KPI設計、スクリプト、反論処理、声・間合いの調整、フォローの仕組み化まで、電話営業のコツを体系化して解説します。

 

前提:勝敗の7割は「準備」で決まる

電話営業は「当たって砕けろ」ではありません。事前に勝ち筋が見える状態を作ってから架電することで、断られにくく、会話が前に進みます。準備では次の3点を押さえます。

  • 誰に:理想顧客像(ICP)。業種・規模・役職・課題・導入障壁。
  • 何を:提供価値の「一言要約」。機能ではなく、業務結果・コスト・リスクの変化で語る。
  • どうやって:初回通話の「小さな合意」。アポ・デモ・資料送付・社内共有の約束など。

 

リストの精度がアポ率を決める

テレアポイラスト

コツを1つだけ挙げるなら、「正しい相手に、正しい提案をする」こと。腕より前に、弾を選ぶ段階で勝敗がつきます。

  • セグメント:地域・規模・業種・使用ツール・採用状況などで細分化。セグメントごとに悩みが変わる。
  • 役職ターゲット:現場/管理/経営で刺さる言葉は異なる。意思決定に影響のある人を最初から狙う。
  • 直近トリガー:ニュース、求人、法改正、決算、イベント参加など「変化の兆し」をフックに。
  • データ鮮度:連絡先・担当の更新。2〜3か月で劣化する前提でメンテ。

 

通話前チェックリスト:環境・KPI・台本・CRM

  • 環境:静音、ヘッドセット、通信品質、録音ON、モニタリング設定。
  • KPI:本日の「接続数」「決裁到達」「アポ」目標とリスト量の整合。
  • 台本:導入10秒、目的提示、共感→質問、価値訴求、クロージングの型。
  • CRM:スクリプト分岐・タグ・次回予定の入力項目を事前に確認。

 

オープニング10秒テンプレ(導入の型)

最初の10秒は「名乗る→目的→安心」の順で、相手の脳内負荷を下げるのがコツ。

(例:総務部向けSaaS)
お忙しいところ失礼します。 <社名> の <氏名> と申します。
人事労務の書類回収を「遅延ゼロ」にするクラウドのご案内で、30秒だけ要点をお伝えしてもよろしいでしょうか?
(例:店舗向け来客ツール)
いつもお世話になっております。 <社名> の <氏名> です。
Google口コミ対策で、既存の来店数を月+5〜10%上げる仕組みについて、要点のみ30秒ご説明してもよろしいですか?
  • 許可取り:「30秒だけ」「要点だけ」など時間の枠を提示。
  • 結果で語る:「遅延ゼロ」「+5〜10%」などアウトカムを先に。
  • 言い切り:語尾は下げて断定。上げ調子は「売り込み感」を強める。

 

ニーズ喚起の質問設計(SPINの要点)

機能説明を急がず、質問で現状→問題→示唆→解決へ導く。

  • S(状況):現状把握。「現在、入退社の書類回収はメールですか?紙ですか?」
  • P(問題):小さな痛みを言語化。「回収遅延は月何件ほどありますか?」
  • I(示唆):放置コストを自覚化。「遅延が1件あると給与計算にどのくらい影響しますか?」
  • N(解決):望む結果を定義。「理想は『催促ゼロ』の状態でしょうか?」

 

反論処理:同意→確認→打ち返し→小さな合意

テンプレは次の4ステップ。否定から入らないのが鉄則。

  1. 同意:「おっしゃる通りです」「ごもっともです」
  2. 確認:相手の真意を要約して確認する。
  3. 打ち返し:事実・比較・事例で短く返す。
  4. 小さな合意:5〜15分の次アクションを提案。
「予算がない」
→ おっしゃる通り、タイミングは大切ですよね。
  ちなみに現状コストの中で「遅延対応」や「やり直し」に割く稼働は月どのくらいでしょう?
  もし15分だけ、今使っている仕組みを前提に「ゼロ円で削れるムダ」を一緒に洗い出すお時間をください。
「まず資料だけ」
→ ありがとうございます。資料はすぐお送りします。
  3分だけ、貴社に関係ないページを外してお届けしたいので、用途を1点だけ教えていただけますか?
  適切にカスタムしてからお送りしますので、明日11:00に3分だけ要件確認のお電話いかがでしょう?

 

声・間合い・聞こえ方のコツ

  • 速度:通常の8〜9割。速さより明瞭さ
  • :重要情報の前後に0.3〜0.5秒の間。脳内バッファを作る。
  • 語尾:お願いは上げすぎない。提案は下げて信頼感。
  • 笑声(えごえ):口角を2mm上げるだけで印象が変わる。
  • ノイズ管理:キーボード音・息マイクを排除。ポップガードかマイク角度を調整。

 

クロージング:選択肢で決めやすくする

「YES/NO」でなく、A/Bの二択で合意形成。

この後の進め方ですが、
①15分のショートデモで要点確認
②先に資料を送付してから要点3分確認
どちらが進めやすいでしょう?

カレンダー提示は具体的に。

私の空きは「明日11:00」か「明後日16:30」です。
他のお時間がよければ調整します。

 

フォローとリマインド(テンプレ)

件名:本日の要点3点(<社名> <サービス名>)
<社名> <氏名> です。お時間ありがとうございました。
・現状:入社手続き遅延が月3〜5件
・理想:催促ゼロ・書類不備ゼロ
・次回:木曜 11:00-11:15 ショートデモ(Zoom)
参考資料:<URL>
当日までに、今のフロー図だけ拝見できると議論が早いです。

 

KPI設計と改善ループ

指標 定義 改善の打ち手
接続率 接続 / 架電 時間帯最適化、番号精査、IVR回避の導入
決裁到達率 決裁者接続 / 接続 受付突破トーク、紹介依頼、決裁者の在席時間把握
要件合致率 合致 / 決裁接続 セグメント再設計、トリガー検出
アポ率 アポ / 決裁接続 価値訴求の順序、A/Bクロージング、反論処理
ショー率 実施 / アポ 前日・当日リマインド、資料の事前送付、共通アジェンダ
受注率 成約 / 実施 事例提示、競合比較、導入プランの選択肢設計
CPL/CPA コスト / リード・成約 自動化・AI化、工数削減、優先度再配分

 

CRM運用ルール(最低限の必須項目)

勉強会

  • パイプライン:初回架電/要件合致/アポ設定/デモ完了/見積/契約。
  • 必須フィールド:決裁者氏名・役職・課題・導入時期・競合・次回予定・通話要約(140字)。
  • タグ:セグメント、トリガー、NG理由(予算/時期/体制/既存契約)。
  • ルール:入力は「通話直後2分以内」。要約は主観を入れず事実ベース。

 

スクリプト設計:分岐は「3層まで」

分岐が深いと現場で使えません。導入→質問→価値→クロージングの4パートに絞り、各パートで3分岐以内に。

導入:名乗り+目的+時間許可
 ├ 資料だけ→ ミニ確認→要約資料+3分コール予約
 ├ 忙しい→ 別時間提示(二択)
 └ 興味なし→ 放置コストの示唆→小合意

 

遵守事項(法令・情報管理)

  • 録音の告知:品質向上目的の録音は冒頭で案内。
  • 個人情報:最小限収集・権限管理・保存期間設定。
  • 架電リストの適法性:入手経路と同意状態を記録。
  • 不在伝言:機密情報は残さない。折返し先と要点のみ。

 

CTI/AIの活用で「母数×再現性」を上げる

人手の技巧だけでは限界があります。自動架電・音声合成・リアルタイム台本で母数と再現性を底上げしましょう。

  • 自動架電AI:人と同等の会話フローで一次ヒアリングとアポ獲得を自動化。
  • スコアリング:音声特徴(沈黙・被せ率・キーワード)で会話の質を定量化。
  • レポート:時間帯別接続率、業界別アポ率、反論別成功トークのABテスト。

実運用例・料金感・連携方法は、PITKの AIテレサポ を参考にしてください。人手とAIの分業で「人は商談、AIは母数」を徹底します。

 

新人オンボーディング30日プラン

  • 1〜3日目:商品理解(価値→機能の順)、ペルソナ、反論集暗記。
  • 4〜7日目:録音シャドーイング、スクリプト読み合わせ、5件モック。
  • 2週目:1日50架電/録音レビュー(自己1本・上長1本)。
  • 3週目:セグメント別トークAB、KPIレビュー、改善計画。
  • 4週目:一人称運用。日次でKPI→改善のPDCAを自走。

 

よくある失敗と回避策

  • 機能から話す結果→理由→機能の順に。
  • 許可を取らない → 「要点だけ30秒」の枠を最初に。
  • 反論に即答しすぎ → まず要約で同意、真意確認。
  • 次の約束が曖昧 → 「日時・所要・目的・成果物」をセットで。

 

チートシート(コール前/中/後)

  • :目的1行/価値1行/質問3つ/クロージング文1つ。
  • :事実→要約→質問→提案。沈黙は0.3秒待つ。
  • :140字要約+次回予定。メールは当日中に。

 

付録:業界別フック例

  • SaaS(バックオフィス):締め作業・滞留・属人化。
  • 小売・飲食:口コミ・来店頻度・人件費。
  • 建設・設備:人手不足・現場連絡・安全書類。
  • 医療・介護:シフト・記録・監査対応。
  • 製造:不良率・段取り替え・在庫回転。

 

実践用ミニ台本(編集して使える雛形)

【導入10秒】
お世話になっております。<社名> の <氏名> です。
「<相手の役割>の <よくある困りごと>」を減らす仕組みで、要点だけ30秒よろしいでしょうか?

【要点提示(結果→理由)】
結果:<売上/コスト/時間/リスク> が <具体値> 改善します。
理由:<仕組みの一言>

【質問(S→P→I→N)】
S:現状は <現行プロセス> でしょうか?
P:どのあたりが一番手間ですか?
I:その影響で月あたりどれくらいロスが出ていますか?
N:理想は <望む状態> で合っていますか?

【価値訴求(3点)】
・<効果1>(根拠)
・<効果2>(根拠)
・<効果3>(根拠)

【クロージング(選択)】
この後は、①15分デモ ②要点資料→3分確認 のどちらが進めやすいでしょう?

【次回設定】
明日11:00か、明後日16:30が私の空きです。他のお時間でも調整可能です。

 

まとめ:コツは「型×母数×検証」

電話営業はセンスではなく、型に沿った練習と検証で再現できます。良いリスト × 良い導入 × 良い質問 × 明確な次アクションを磨き、録音レビューとKPIで「昨日より少し良い」状態を積み上げていきましょう。規模化にはAI・自動架電の併用も検討し、AIテレサポのような仕組みで母数と再現性を増幅させるのが近道です。

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